『ヒトとアリどちらが働き者か』

本を返したり処分したりする前にまとめて記録しておこうと思い立ったので。
今回はこの『ヒトとアリ、どちらが働き者か』。何かと言うと働き過ぎと言われてきた日本人ですが、じゃあ他の生物はどうなのかという視点から書かれた本。著者は科学ジャーナリストであり、文章が読みやすく面白い。あの超有名な『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)』でおなじみの本川達雄氏が推薦の言葉を寄せているけれど、本書にはあまり数式は出てこなかった。それよりも人間と他の生物の仕事っぷりを並べてみることで何か見えてくるものがあるんじゃないか、というコンセプトの下、いろいろな動物の生態が紹介されていく。アリはその中の一例で、まあ新書にありがちなタイトルの付け方ですね。読んでみた感想としては、普通に動物雑学として面白かったです。ハオリムシ(愛称のチューブワームのほうが有名かも)っていう生き物がいることはこの本で初めて知った。
本書における「仕事」には、生きていくために必要な行動としての「食事」、「巣作り」、「子育て」といったものも含まれている。普通の生物にとって仕事がどれだけ命懸けのものなのかよく分かる。「人間は遊ぶ生き物である」とはよく言ったものだけれど、確かにただ遊ぶ以外にも、食事や巣作りや子育ての中にさえ人間は隙あらば遊びの要素を取り入れてきた。特に最近は「ゲーミファイ」といって勉強や仕事もゲーム化してしまおうという考え方が出てきているし、なんかもう「生きることは遊ぶことである」の領域に近づいてきている感じだ。
僕は散歩しているときにカラスが遊んでいるのを見ることがある。この前などは、二羽のカラスが向い合ってひとつのビニール袋を咥え、ぴょんぴょんと歩調を合わせながら跳んで運んでいる光景に遭遇した。しかもその周りにはたくさんのカラスが集まって、その運んでいる二羽を眺めていた。あまりに面白くて自然に笑みがこぼれてしまった。
カラスは他にも、くちばしで木の枝にぶら下がったりと様々な行動をとる。次はいろいろな生物の「遊び」についての本も出てほしいな、と思う今日この頃だ。


滑るカラス


前転するカラス