『まず「書いてみる」生活』

ブログ書く参考になるかと思って読んでみたら、なんと定年退職者向けの本だった。定年で、子育ても終わり、さて何をやろうかと考えている人に、文章を書いてみるのはいかがと勧める内容。著書を持つことの良さとか、書いている間にどんな気分の変遷があるとか、書くには体力がいるとか、そういうことを主に著者の経験をもとにして滔々と述べている。著者は多作家として知られているだけあって体験談も豊富だ。僕(20代後半)としてはパソコンを使うことの良さを強調している部分が何だか新鮮に感じた。村上春樹がデビューしたときは原稿用紙と万年筆で書いていた、という話にびっくり。当時はそうしなければ「文学」と認められなかったらしい。なんだか偏狭な話だなと思いつつも、ネットで調べてみれば今どきの文学新人賞もいろいろと謎の制約を掛けているらしいことが分かる。だいたい縦書きであることが必須で、しかも紙に印刷して送らなければいけない。その頑固さが文学を殺さないといいけど。(それより数値や数式を扱う新書を縦書きにしないでほしいな……)
本書には文章技法についても(著者のやり方を、だけど)紹介されている。とにかく著者は異常とも言える量の本を実際に書いてきた人だ。本書に挙げられた体験談(書き始めることの重要性とか、半分書くとあとは楽とか)はきっと現役の人にも役立つことだろう。